監修医:日本赤十字社広島赤十字・原爆病院
輸血部副部長・血液内科 黒田 芳明 先生

からだの中で起こっていること

多発性骨髄腫は血液のがんです。血液中の白血球の一つである形質細胞が「骨髄腫細胞」というがん細胞に変わり、骨の中で増えていくことで進行します。

血液は骨の中でつくられている1)

私たちのからだの中に流れている血液は、主に赤血球と白血球、血小板という3つの血液細胞から成り立っています。
この血液細胞はもともと一つの細胞から分裂してつくられたもので、体を支える太い骨の中心部にある「骨髄」と呼ばれる場所で日々、規則正しいスピードで分裂し数を増やしています。やがて、分裂を終えて成熟した血液細胞は骨髄から離れると、血液として全身を駆け巡り、生命活動を維持するために活動します。

血液は骨の中でつくられている 血液は骨の中でつくられている

白血球の一つである形質細胞ががん細胞に変わる1)

白血球にはいくつか種類があります。そのうちの一つである形質細胞が、がん細胞へ変わってしまう病気が多発性骨髄腫です。形質細胞ががん化すると「骨髄腫細胞」というがん細胞になります。

白血球の一つである形質細胞ががん細胞に変わる 白血球の一つである形質細胞ががん細胞に変わる

がんに対する免疫のはたらき

人の体には、細菌やウイルス、がん細胞などの異物から体を守る免疫という仕組みが備わっています。
免疫を担っている細胞の一つであるTリンパ球(T細胞)には、がん細胞を攻撃する性質があります。
しかし、なんらかの理由によりT細胞が弱まったり、がん細胞がT細胞が持つ攻撃する性質にブレーキをかけてしまったりすることがあり、がん細胞を攻撃しきれない場合があります。
がんに対する治療では、T細胞ががん細胞を攻撃する力を高めたり、T細胞ががん細胞を攻撃する性質にブレーキをかけるのを防いだりする治療があります。

がんに対する免疫のはたらき がんに対する免疫のはたらき

通常、がん細胞の表面には、特有の目印(がん抗原)が発現しています。
T細胞は、がん抗原を見つけると、がん細胞に近づき、タンパク質を放出して攻撃し排除します。

がんに対する免疫のはたらき がんに対する免疫のはたらき

一方、T細胞の活性が弱まったり、がん細胞がT細胞の機能にブレーキをかけたりする場合があり、がん細胞を排除しきれない場合があります。

1)日本臨床内科医会 学術部(編):わかりやすい病気のはなしシリーズ51 多発性骨髄腫 第4版. 日本臨床内科医会, 2019
多発性骨髄腫のメカニズムや治療をもっと詳しく